小規模システムを導入することがそのまま成功に結びつくわけではありません。業務効率の改善度合いは、その取り組み方や、工夫により大きく左右されます。ここではどういったポイントに気をつけるべきか、小規模システムの導入に際しての成功の秘訣について解説しています。
業務の見直しを同時に行う
まず一つ目のポイントは、システム化しようとしている業務の見直しも同時に行うというポイントです。よほど厳しい制約がある業務であれば別ですが、例えば従来は紙を必須として制限を緩和してみたり、手渡し必須だったものをオンラインでの受領も可にしたりするといった制限の撤廃はそれだけシステム化した際の効率が高まるのでお勧めです。また、部署内の承認フローを変更してみたり、運用のルールを調整したりすることも、可能であればシステムをシンプルにすることにつながるのでコストカットになります。
業務やルールの見直しは関係部署との調整が必要になることも多く、大変な作業ではありますが、システム化という理由があると議論しやすいという側面もあります。以前よりもITやDX(デジタルトランスフォーメーション)への理解が高まっている背景事情も追い風でしょう。聖域に切り込め、とまでは言いませんが、できる限りの範囲で、業務の見直し、シンプル化も並行して進めてみて下さい。
システムを使う立場をしっかり整理しておく
システムを使う人は誰か、という問いは非常に重要です。それは利用者側ももちろん、管理者側としてもどういった人の利用を想定するかでシステムの設計が変わってくるためです。
例えば管理者ほど全権を持っていないが、実務上必要な権限を持っている準管理者のような立場があることは多いと思います。また、特定の担当領域のみ閲覧、操作できる必要があるスタッフもいるかもしれません。さらには運用業務自体を委託する場合であれば、委託会社の人にもアカウントを発行する必要があるでしょう。こうした立場による制限はあらかじめ組み込んでおく方が後々の拡張を行いやすくなります。
もちろん、後からでも操作立場を追加することはできますので、最初から完璧である必要はありませんが、システムの利用イメージを具体化する意味でも、どういった方がどういった使い方をするかは、しっかりと整理しておくのをお勧めします。そして、そういった方々のヒアリングや、場合によっては直接のプロジェクト参画も検討してみてください。実際に導入の段階になって、使う側から反発やすれ違いがおこっては本末転倒です。
段階的な投資を計画しておく
システムというのは想像されている以上に柔軟な生き物です。建物や物理的な物体であれば一度作ってしまうとなかなか修正したり変更したりできませんが、システムというのは比較的容易に改修することができます。この性質を活かさないわけにはいきません。
例えば、最終的には大きな展開を予定しているものの予算上の制限が強い場合には、第一段階のシステム開発と第二段階の改修とにわけることで初年度の予算を抑えることができます。また、第一段階での運用経験から見えてくる課題や方向性も当然出てきますので、第二段階の改修計画の精度が非常に高まるというメリットもあります。
何でもかんでも段階に分けて投資するのを推奨するわけではありませんが、不確実性が高い場合や、機能の最適解に自信が持てない場合などには、戦略的に先送りするのも一つの手です。もちろん、最初に作るときにまとめて作ってしまう方が効率的な場合もありますが、不確実性がそれ以上のリスクとなる場合には、目先の効率性よりも確実性を取るほうが合理的な場合があります。
主担当者に積極的に関与してもらう
これはシステム開発プロジェクトに限った話ではありませんが、システムができたときに一番使う人をプロジェクトに巻き込めるかどうかは非常に重要です。当然、業務に精通しているわけですし、どういったことに時間をとられているかも一番身をもって経験しているはずです。
可能であればシステム開発プロジェクトの依頼側の窓口がそういった主担当者であればさらにスムーズになります。業務負担との兼ね合いももちろんありますが、それを差し引いても大きなメリットになります。システムが稼働する際のマニュアル作成においても非常に強力な推進者となってくれるのは間違いありません。部署内でうまく役割分担をやりくりする等して、主担当者が十分に時間を使えるようにするのをお勧めします。